日常空間で特定点を表現する場合、一般的には3次元座標を利用します。原点からそれぞれ直交する3本の軸
(X・Y・Z軸)を立て、特定点と各軸までの距離で位置を示します。点Aは(x y z)と表現され、客観的な視点を持った座標系です。
ヒトの身体は左右対称ですから3次元座標内でヒトの正中面をY・Z面に一致させた場合、
1・2 個別座標(特定個人別座標)
個別座標(特定個人別座標)とよぶ座標系を定義します。ある平面に特定個人が直立した場合、その身長・体格から外後頭隆起*の位置が決まります。外後頭隆起が個別座標系の原点(0)です。外後頭隆起を含む正中面を頭部垂直面とよびます。個別座標系は原点と(左右の空間をふくむ)頭部垂直面で構成されます。
(注)外後頭隆起*;眼の高さ真後ろ、頭蓋骨のそら豆大の隆起
個別座標内に点Aが与えられた場合、Aから頭部垂直面に垂線を下ろしてA’を決め0→A’間の距離をγ、直線0→A’と頭部垂直面上の水平線がつくる角度をθ、A→A’間をtとすると、Aは(γ、θ、t)で表せます。
点Aがある平面上で何らかの運動をする場合、Aの運動軌跡をイメージする思考実験をおこないます。Aが運動する平面をホストに正対する垂直面(Ⅰ)と隆椎*を含む斜行平面(Ⅱ)で、点Aの運動を直線運動と曲線運動に分けて考えます。
※隆椎*;首根っこ真後ろ、脊柱の(第7頚椎)隆起部分
Aを表すパラメーター(γ、θ、t)のγ、θが固定されtのみが変動します。
(Ⅰ)面上でBが斜行直進する場合
(Ⅱ)面上でAが斜行直進する場合
A(γ、θ、t)のパラメーターがすべて変動します。
(Ⅱ)面上でAが楕円運動する場合
A(γ、θ、t)のパラメーターがすべて変動しますが、その変化様式は斜行直進に比して複雑です。
この思考実験からA(γ、θ、t)の運動軌跡イメージの難易度は
① 水平移動の変動パラメーターはtのみであり軌跡イメージは最も容易である。
② 同一平面上で曲線運動と直線運動を比較すると、曲線運動のパラメーターの変化率は直線運動に比して複雑であり軌跡イメージはより困難である。
ことが分かります。
―基準ベクトル・基準垂直面―
個別座標内の右から左の水平方向ベクトルを基準ベクトル(⇔と表記)と定めます。基準ベクトルに平行な垂直面を基準垂直面とよびます。
点Aを含む基準垂直面をA基準垂直面、点Aを含み基準垂直面に直交する垂直面をA垂直面とします。
例) 頭部垂直面;原点(外後頭隆起)と個別座標系を構成します。
頭部基準垂直面;外後頭隆起を含み頭部垂直面と直交する垂直面です。
左内踝垂直面;左内踝を面上に含む頭部垂直面と平行な垂直面です。
ボール基準垂直面;ボールを面上に含み頭部垂直面と直交する垂直面です。
―個別座標系の表示記号―
位置記号 < > ;位置関係・距離を表示
集合記号 {
} ;圏、群を表示
運動記号 【 】 ;運動状態を表示
変化記号 → ;状態の変化を表示
位識点記号 ≪ ≫ ;位識点*の表示
ベクトル記号 ⇔ ;基準ベクトルの表示
重心記号 ◎ ;クラブ重心領域の表示
振動節記号 ◆ ;近位振動節**の表示
(注)位識点*;解剖・生理を参照、近位振動節**;クラブ構造を参照
1・3 圏域の設定
個別座標内に基準構造(F)と関心点(A、B、C・・・)が与えられたとき、Fと関心点群を含む領域を設定し、圏Fとよび次式のように表現します。
{ F∥A、B、C・・・}
標準的な基準構造は特定直線です。直線以外に特定平面(頭部垂直面など)、特定領域(隆椎など)を基準にした圏の設定も可能です。
1・4 基準線と定点の位置関係
{ F∥A }が与えられたとき、適当な平面上にF、Aを投射してFとAの水平方向(⇔)の位置関係を次のように表現します。
<F⇔∥F、A>: AはFの右にあることを示します。
<F⇔∥A、F>: AはFの左にあることを示します。
F、A間の距離を次のように表現します。
<F⇔∥F*A>=α:F、A間の距離がαであることを示します。
<F⇔∥F*A>=0:AがFに重なる場合です。
<F⇔∥F*A>=φ:AがFの左側にある場合です。
この場合のA とFの距離は<F⇔∥A *F>(≠φ)で示します。
―2点間の位置関係―
{ F∥A、B}が与えられたとき、適当な平面上にF、A、B を投射して水平方向(⇔)の位置関係を次のように表現します。
<F⇔∥A、B>:Fを基準線として AはBの左にあることを示します。
A、B間の距離を次のように表現します。
<F⇔∥A*B>=α:A、B間の水平距離がαであることを示します。
<F⇔∥A*B>=φ:AがBの右側にある場合です。
この場合、2点の距離はB、A間になり<F⇔∥B*A>(≠φ)で示します。
《応用》
基準として太さのある軸(G)が与えられた場合、Gの左縁か右縁を基準線に選びます
修飾辞をつけて選択した縁を示します。
(㊧-G):軸Gの左縁を基準線に選択したことを示します。
(㊨-G):軸Gの右縁を基準線に選択したことを示します。
与えられた点(A)が容積をもつ場合、関心域点を修飾辞で示します。
(㊧-A):関心域点は点Aの左端であることを示します。
(㊤-A):関心域点は点Aの上端であることを示します。
<(㊨-G)⇔∥(㊨-A)*(㊧-B)>=0:軸Gの右縁でAの右端とBの左端が接していることを示します。
《略記法》
{ F∥A、B}が与えられ、位置関係の指標である基準線F と基準ベクトル(⇔)が自明であるとき(F)と(⇔)は省略します。
<F⇔∥A*B>=α → <A*B>=α
<F⇔∥F*A>=α → <F*A>=α
―定点の運動、特異点、ベクトル反転―
{ F∥A }が与えられ、Aがある運動状態の場合
<F*A>=0 が特異点でAのFに対する運動ベクトルが反転します。
{ F∥A、B }が与えられ、A、Bがある運動状態の場合
【<F∥A*B>=α→0→φ】 はBが右からAに近づき左へ通過することを意味します。
<F∥A*B>=0 が特異点でBのAに対する運動ベクトルが反転します。
3次元座標での2点間の距離・位置関係の表示は客観的な指標ですが、個別座標内では圏設定や定点の投射・写像も含めて感覚的な表現です。
1・5 補助軸の設定
個別座標に4本の補助軸を想定します。軸起点は左右足首関節の内踝、外踝位置、起点構造は球関節タイプで自由に回転可能な軸をイメージします。内踝を起点とする軸をMP(メジャー軸)、外踝を起点する軸をSP(スモール軸)と呼びます。
接尾辞をつけて左右を区別します。
左外踝軸:SPL(small-pole-left) 右外踝軸:SPR(small-pole-right)
―軸状態の表現法―
4本の軸はスイング過程で関心領域(点)と関連して回転状態と静止状態を推移します。
{ P∥A }での補助軸Pと関心領域Aの動態の表現法です。
【P∥静止、∋A】 P軸がAを軸上に乗せて静止しています。
【P∥静止、∋Φ】 P軸は関心領域(点)を軸上に含まず静止しています。
軸設定はクラブ重心やゴルファー身体の関心領域を補助軸上へ投射することでスイング行程を感覚的な直線運動に還元することを目的としています。
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