2014年4月21日月曜日

3 クラブ構造


3・1 クラブ重心 
                         















クラブ全体の重心位置の理解が重要です。ゴルファーは本質的にクラブ重心を振るからです。
クラブ重心はシャフトから離れた空間に位置するため、吊り下げ実験を通じて重心位置を確認します。一般的に剛体(例えば鉄球)の重心位置は一点に決まりますが、スイング時のクラブ重心はシャフト弾性に起因する形態変化のため、ある領域に分布します。クラブの重心領域を想定し()で表現します。
                       
―ホームポジションのクラブ保持―                    
ホームポジションはテイクバックへ移行前の静止姿勢であり、クラブ保持様式も安定であることが望まれます。
グリップ形式{GLF5-abLF2-bcLF1-cRF4-abRF2-bcRF1-c}でクラブ重心領域()がシャフトを含む垂直面上にのるクラブ平衡姿勢に保持します。()がシャフト垂直面上から外れると、クラブを保持するためシャフトにネジリを加え力学バランスを保つ必要があるからです。


3・2 クラブヘッド
                          
クラブヘッドのボールに対する仕事効率の観点から打球面のスイートスポット(以下S/P)とヘッド打球線(以下H打線)の理解が重要です。

1)スイートスポット
ヘッド打球面のスイートスポット(S/P)はボールが一番よく弾む部位です。実際にボールを打球面に弾ませてその位置を確認します。

2)ヘッド基準線とヘッド打球線
スイートスポット(S/P)からリーディングエッジ(以下LE)に直角におろした垂線をヘッド基準線(以下H基線)とよびます。
ヘッド打球線(H打線)はクラブフェースの向きと関連した概念です。サンドウェッジでクラブフェースの向きの確認実験を行います。グリップエンドを把持してつり下げたウェッジの(S/P)にボールを自然落下させます。この場合のボールの弾む方向は(LE)に直交する(H基線)方向ではなく、左斜め上方向であることが分かります。弾んだボールは放物線を描きますが、(S/P)を含む放物線がつくる垂直面が本来のフェース面の向きを示しています。この垂直面とクラブフェースが作る直線とリーディングエッジの交点からスイートスポットまでをヘッド打球線(H打線)とよびます。              
H打線)の想定はショートアイアンでは容易ですが、ウッドクラブではヘッド内にヘッド打球線をイメージします。                        

3)ネック形状
ストレートネックのクラブを対象にしています。
グースネックアイアンの検討予定はありません。



3・3 シャフト&ヒール

                         













「シャフトをしならせ、そのシナリ戻りをボールヒットに利用すること」が重要です。
シャフトをシナラセル際、同時にシャフトにネジリを加えます。クラブ重心()がシャフトから離れた空間にあるためシャフトをネジル作業はシャフトを軸にして()を回転させる作業になります。その遠心力がシャフトをタワマセ、シャフトのシナリが効率的に実現します。

1)波としてのシナリ
シャフトのシナリ波の一種とみなせますから「シャフトを利用すること」と「シャフトを伝播した波の反射波を利用すること」は同値です。
実際のシナリはシャフト全長にわたり(波としての)伝播様式や反射動態が扱いにくいため、シナリの頂点にゴルフボール程度の圧縮イメージ波(ωで表示)を想定します。(ω)をスイング構造に組み込むことでシナリの制御が容易になります。

形態表現:                              
+ω;左に凸の形態のイメージ波
-ω;右に凸の形態のイメージ波
波の反射型:
波の位相がずれない自由端反射
波の位相が(π)ずれる固定端反射

2)振動としてのシナリ                          
シャフトのシナリは振動の一種ともみなせますから「振動の節」を設定し波の伝播様式の制御に利用します。
シャフトをネジリ、シナラセテ容易に(-ω)を形成できるグリップに最も近いシャフト位置を「近位振動節()*とよびます。()からの(-ω)波の伝播によるグリップ側のシャフト運動を両手で制御することで()を固定端とした波の反射が実現できます。
(注)()*;近位振動節表示


3)シャフトアクションの6相 





















                     
p-ω*】相;シャフトをシナラセル準備段階。
G/ERF1-aRF2-bcRF4-bc、㊧-右肘}&(右前腕の回内運動機能)でシャフトに右回転のネジリを加えシャフトをシナラセます。
【-ω】相;シャフトをしならせて近位振動節()(-ω)波を形成。
【ω-p*】相:(-ω)波がシャフト上をヒールまで伝播
【+ω】相:(-ω)波がヒールで固定端反射*(+ω)波に変化
【ω-b/p*】相:(+ω)波がヒールから()まで逆行伝播
【ω-Act*】相:()に到達した(+ω)波がインパクトアクション
(注1)p-ω*pre-wave(-ω)-p*wave-parade(+ω)-b/p*wave-back-parade
ω-Act*wave-action

(注2)ヒールの固定端反射;ヒールに伝播した波の反射はシャフトに連結したヘッドのため固定端反射になります。







2014年4月8日火曜日

2 解剖・生理


2・1 生物学的なヒトの特徴                    
現代のヒトは生物分類表で、動物界―脊椎動物門―哺乳綱―ヒト科―ホモ・サピエンス
に分類されています。
ヒトの運動様式は脊椎動物の基本骨格である脊柱に規定されるため、安定したゴルフスイングの確立には四肢運動にあわせて脊柱運動の分析が必要です。



2・2 ヒトの運動様式












ヒトは身体の骨格筋()を収縮させて運動しますが、筋肉()は原則的に隣り合う2つ以上の骨に接合しています。隣接する骨()は関節を形成するので筋肉の役割は収縮により関節機能を実現することと同値です。
これは身体運動を「関節機能を含めた骨群の位置関係の変化」に還元できることを示しています。

―関節の基本性質―                           
屈曲筋Aと伸展筋Bで構成される屈曲型関節モデルでの思考実験です。
屈曲準備状態では筋Aと筋Bの収縮力が等しい平衡状態ですが、関節屈曲時には筋Aが収縮し、筋Bが弛緩します。
再度の屈曲にはB収縮、筋Aが弛緩し平衡状態が復元される必要がありますが、この場合、筋Bは緩徐に収縮することが重要です。筋Bが急速に収縮すると関節が平衡状態を通りこして伸展側に「きまってしまう」からです。
一般的に関節は機能筋(収縮筋)と拮抗筋で平衡状態を保ち、機能筋で関節機能を実現します。再度の収縮には緩徐な拮抗筋の収縮で平衡状態を回復する必要があります。
短時間の1作業内に1つの関節機能を2度以上実現することは生理的に困難なことを意味します。



2・3 ヒトの骨格                  
ヒトの骨格は体幹骨格と四肢骨格に大別されます。              
体幹骨格:
頭蓋骨;外後頭隆起が個別座標の原点です。
頚椎群{C 1C7};環椎(C1)は後頭骨(頭蓋骨)と環椎後頭関節で連結しています。
(C7)の棘突起は明らかな隆起を形成するため (C7)を隆椎とよびます。
頚椎群の機能は胴体部の運動が頭部に与える影響を軽減し安定した頭部位置を確保することです。
胸椎群{Th1Th12 肋骨群に連結、胸郭を支持します。
腰椎群{L1L5};仙骨に連結、上半身の重量を支持します。
仙骨;骨盤の構成骨で腸骨と仙骨関節を形成します。左右の外側仙骨稜が重要です。

四肢骨格:胸郭、肩甲骨、上腕骨、前腕骨、手指骨群、骨盤、下肢骨群、足骨群



2・4 体幹骨格と体幹姿勢
―頭部支持様式― 

                           









頭蓋骨は第1頚椎(環椎:C1)と環椎後頭関節を形成します。環椎(C1)の左右二対の平皿状の関節面で頭蓋骨底部の半球上の後頭顆を支えています。     
{外後頭隆起と環椎後頭関節}全体を一種のヤジロベーと見做すことができます。


―脊柱―                                
脊柱は多数の脊椎骨が重なって形成されます。脊椎骨は椎体の後方に棘突起、左右に横突起と呼ばれる突起を有します。上下に重なる脊椎骨は関節を形成しています。この関節は回転型と屈曲型の2種類の関節機能をもちます。


―上半身姿勢の制御―
基本構造:{胸椎群 ο胸郭 ο鎖骨 ο肩甲骨 ο上腕骨 ο前腕骨群 ο手骨群}
胸椎から手骨群は関節構造(ο)で連結されています。複数の可動点(ο)があるため運動様式は複雑です。

1){胸郭 ο鎖骨 ο肩甲骨 ο上腕骨}の機能












鎖骨に連結した肩甲骨が胸郭上に乗っかる形態から、肩甲骨は胸郭上の一定範囲で滑り移動が可能です。

モデル装置を想定し運動様式を整理します。                 
適当な木棒が釣鐘頂点と釣鐘下縁で接続した釣鐘状の竹篭を想定します。
上面に取手を装着し下面が凹面の木製の落し蓋と長短2本の柳小枝を想定します。
長短2本の柳小枝が直交する形態で落し蓋に連結し、自由端にリング構造を接続した装置を想定します。短い小枝側のリングを中心棒に通し竹篭の左右に落し蓋を乗せ、長い小枝側のリングを紐で連結します。

 
                      












木棒で支えた竹篭上で左右の落し蓋を滑らせ連結リングの位置を移動させる思考実験です。
連結リングを移動させるには①左右の落し蓋を同時に竹篭上で滑らせる、②左()を固定し右()を竹篭上で滑らせる2通りの方法があります。
連結リングの移動位置を制御する観点から①法よりも②法が安定です。

中心棒を脊柱に、竹篭を胸郭に、短柳枝を鎖骨に、落し蓋を肩甲骨に、落し蓋の取っ手を肩甲棘に、長柳枝を上・前腕に、連結リングをグリップに対応させ胸郭 ο鎖骨 ο肩甲骨}の運動様式を整理します。
肩甲骨の位置固定の指標は菱形筋、肩甲挙筋、棘上筋、棘下筋が集中する肩甲棘三角です。
肩甲骨の滑動様式は解剖学的に菱形筋の制約をうけるため、肩甲棘三角を中心にした回転滑り運動になります。
【左右滑動型肩甲骨運動】:
左右の肩甲骨を胸郭上で回転滑り運動します。スイング構築には利用しません。
【右固定型左肩甲骨滑動運動】
位置固定の指標は右肩甲棘三角です。右肩甲骨を位置固定し、左肩甲骨を胸郭上で回転滑り運動します。テイクバックに関連します。
【左固定型右肩甲骨滑動運動】
左肩甲骨の位置固定の指標は左肩甲棘三角です。左肩甲骨を位置固定し、右肩甲骨を胸郭上で回転滑り運動します。インパクトに関連します。
                       


2){肩甲骨、上部胸椎、頚椎、上腕骨}の機能

               










肩甲骨と上部胸椎、頚椎、上腕骨の相互作用に関係する重要筋群の検証です。
右肩甲骨に付着する重要な筋群は次の3群です。 
ⅰ;第6・7頸椎と第1~4胸椎から起こり肩甲骨内側縁に付着する菱形筋
ⅱ;第1~4頸椎と肩甲骨上角中心に分布する肩甲挙筋
肩甲棘の上下窩と上腕骨に分布する筋群(棘上筋、棘下筋)

)群筋の本来の機能は右肩甲骨を内側に引くことですが、右肩甲棘三角を位置固定すると、第6・7頸椎と第1~4胸椎の右側線がきまります。            
)群筋の本来の機能は肩甲骨を上内方に引くことですが、右肩甲棘三角を位置固定すると第1~4頸椎の右側線がきまります。                    
)群筋;右肩甲棘三角を位置固定し③群筋を収縮させると右上肢が挙上します。














3){上腕骨、前腕骨}の機能
上腕骨と前腕骨は肘関節で連結されています。
肘関節は上半身の機能状態と関連したクラブ支持様式に重要な役割をもちます。
上半身の機能状態を「巧緻作業」に適した状態に保つように肘関節のクラブ支点として内肘(上腕骨内顆)を利用します。



4){手骨群}
哺乳類、霊長目の手の特長は「拇指と他指との対向性の進化に基づいた物を掴む能力」です。クラブシャフトを手指で把持する観点から手指の機能を検討します。









拇指と他指の対向性からみた把持様式:                   
拇指先端⇔2指先端
拇指球 ⇔3指先端
拇指球 ⇔4指先端

第5指には拇指の(明確な)対向領域が設定できません。
小指丘 ⇔5指
※小指丘と共同して対象物との接点(把持支点)を形成します。


―下半身姿勢の制御―
1)団扇・板モデル 
                          













扇部形態が五角形の団扇状の板(P)と扇部形態の空隙をもつ大きい板(Q)で関節モデルを想定します。(P)の柄部を操作することで(Q)の単純な姿勢制御が可能です。
扇部(P0)と柄部(Ph)が関節構造で接合され、(P0)内に作用点を2つ設定したモデルを想定します。
このモデルでは(P0)(Ph)(Q)のより複雑な姿勢制御が可能です。姿勢制御の指標は(P0)内の2つの作用点と(P0)&(Ph)が作る関節構造の両端の4点です。


2)腰椎群、仙骨、骨盤
第5腰椎と仙骨は関節で連結し、仙骨と骨盤は仙腸関節とよばれる関節を形成しています。
団扇・板モデルで扇部に設定した2つの作用点を左右の(外側仙骨稜)に、柄部の両端をL5腰椎の左右横突起に対応させると腰部と骨盤の姿勢制御モデルに相当します。
{腰椎群、仙骨、骨盤}群の運動様式は(L5腰椎横突起)(外側仙骨稜)との位置関係に規定されます。


3)ドーナッツ・スティックモデル 
                   













円形ドーナツの左右に2本のスティックを挿したモデルを想定します。スティックでドーナツ体を回転させる様式としては、2本のスティックを捻りながらドーナツ体を回転する様式①、片方のスティックの刺入部を位置固定し他方のスティックでドーナツ体を回転する様式②があります。


4)骨盤、大腿骨、ケイ骨&ヒ骨、足骨群
腰部から足までの骨群は、{骨盤ο大腿骨ο(ケイ骨&ヒ骨)ο足骨群}で構成されています。この骨群の最重要機能は骨盤の回転運動です。連結部の股関節、膝関節、足関節は可動点であり下肢を構成する多数の骨と複数の可動点を個々に制御するプログラムは複雑です。
ドーナッツ・スティックモデルのドーナツ体を骨盤に、スティック刺入部を股関節に、スティックを大腿骨以下に対応させます。
「4軸スイング」で利用する骨盤回転運動は様式②に相当し、「片側股関節位置固定型骨盤回転」とよびます。ポイントは支点となる股関節の位置固定です。
{大腿骨、(ケイ骨&ヒ骨)、足骨群}の機能は「片側股関節位置固定型骨盤回転」を支えるスティックに対応します。必要時に股関節を支えられるように連結部の膝関節と足関節が適切に「きまる」必要があります。                    


 股関節の関節タイプは「球関節」であり、回転運動以外では「片足で休め」で代表される屈曲運動も可能です。
日常生活では骨盤の回転運動機能より屈曲運動機能を利用する頻度が多いので、骨盤回転運動に比して安定性・再現性が劣る「屈曲運動」をスイング構造に組み込まない注意が必要です。                                 

5)足骨群
足底の加重位置はスイングフェーズによって変化しますが、加重位置変化は「回転軸・補助軸の作業」と「片側股関節位置固定型骨盤回転運動」を通じて制御します。



2・5 クラブ支持様式                         














左5指*小指丘が協同してグリップエンドを支持しクラブの運動支点を設定します。
左4指*拇指球と右4指*拇指球でクラブを把持します。
クラブの全体重心がシャフトを含む垂直面上に位置することが条件で、このクラブ把持様式を「クラブ平衡姿勢」と呼びます。