3・1 クラブ重心
クラブ全体の重心位置の理解が重要です。ゴルファーは本質的にクラブ重心を振るからです。
クラブ重心はシャフトから離れた空間に位置するため、吊り下げ実験を通じて重心位置を確認します。一般的に剛体(例えば鉄球)の重心位置は一点に決まりますが、スイング時のクラブ重心はシャフト弾性に起因する形態変化のため、ある領域に分布します。クラブの重心領域を想定し(◎)で表現します。
―ホームポジションのクラブ保持―
ホームポジションはテイクバックへ移行前の静止姿勢であり、クラブ保持様式も安定であることが望まれます。
グリップ形式{G∥LF5-ab、LF2-bc、LF1-c、RF4-ab、RF2-bc、RF1-c}でクラブ重心領域(◎)がシャフトを含む垂直面上にのるクラブ平衡姿勢に保持します。(◎)がシャフト垂直面上から外れると、クラブを保持するためシャフトにネジリを加え力学バランスを保つ必要があるからです。
3・2 クラブヘッド
1)スイートスポット
ヘッド打球面のスイートスポット(S/P)はボールが一番よく弾む部位です。実際にボールを打球面に弾ませてその位置を確認します。
2)ヘッド基準線とヘッド打球線
スイートスポット(S/P)からリーディングエッジ(以下LE線)に直角におろした垂線をヘッド基準線(以下H基線)とよびます。
ヘッド打球線(H打線)はクラブフェースの向きと関連した概念です。サンドウェッジでクラブフェースの向きの確認実験を行います。グリップエンドを把持してつり下げたウェッジの(S/P)にボールを自然落下させます。この場合のボールの弾む方向は(LE線)に直交する(H基線)方向ではなく、左斜め上方向であることが分かります。弾んだボールは放物線を描きますが、(S/P)を含む放物線がつくる垂直面が本来のフェース面の向きを示しています。この垂直面とクラブフェースが作る直線とリーディングエッジの交点からスイートスポットまでをヘッド打球線(H打線)とよびます。
(H打線)の想定はショートアイアンでは容易ですが、ウッドクラブではヘッド内にヘッド打球線をイメージします。
3)ネック形状
ストレートネックのクラブを対象にしています。
グースネックアイアンの検討予定はありません。
3・3 シャフト&ヒール
「シャフトをしならせ、そのシナリ戻りをボールヒットに利用すること」が重要です。
シャフトをシナラセル際、同時にシャフトにネジリを加えます。クラブ重心(◎)がシャフトから離れた空間にあるためシャフトをネジル作業はシャフトを軸にして(◎)を回転させる作業になります。その遠心力がシャフトをタワマセ、シャフトのシナリが効率的に実現します。
1)波としてのシナリ
実際のシナリはシャフト全長にわたり(波としての)伝播様式や反射動態が扱いにくいため、シナリの頂点にゴルフボール程度の圧縮イメージ波(ωで表示)を想定します。(ω)をスイング構造に組み込むことでシナリの制御が容易になります。
波の形態表現:
+ω;左に凸の形態のイメージ波
-ω;右に凸の形態のイメージ波
波の反射型:
波の位相がずれない自由端反射
波の位相が(π)ずれる固定端反射
2)振動としてのシナリ
シャフトのシナリは振動の一種ともみなせますから「振動の節」を設定し波の伝播様式の制御に利用します。
シャフトをネジリ、シナラセテ容易に(-ω)波を形成できるグリップに最も近いシャフト位置を「近位振動節(◆)*」とよびます。(◆)からの(-ω)波の伝播によるグリップ側のシャフト運動を両手で制御することで(◆)を固定端とした波の反射が実現できます。
(注)(◆)*;近位振動節表示
3)シャフトアクションの6相
【p-ω*】相;シャフトをシナラセル準備段階。
{G/E∥RF1-a、RF2-bc、RF4-bc、㊧-右肘}&(右前腕の回内運動機能)でシャフトに右回転のネジリを加えシャフトをシナラセます。
【-ω】相;シャフトをしならせて近位振動節(◆)に(-ω)波を形成。
【ω-p*】相:(-ω)波がシャフト上をヒールまで伝播
【+ω】相:(-ω)波がヒールで固定端反射*し(+ω)波に変化
【ω-b/p*】相:(+ω)波がヒールから(◆)まで逆行伝播
【ω-Act*】相:(◆)に到達した(+ω)波がインパクトアクション
(注1)p-ω*;pre-wave、(-ω)-p*;wave-parade、(+ω)-b/p*;wave-back-parade、
ω-Act*;wave-action
(注2)ヒールの固定端反射;ヒールに伝播した波の反射はシャフトに連結したヘッドのため固定端反射になります。