2014年4月8日火曜日

2 解剖・生理


2・1 生物学的なヒトの特徴                    
現代のヒトは生物分類表で、動物界―脊椎動物門―哺乳綱―ヒト科―ホモ・サピエンス
に分類されています。
ヒトの運動様式は脊椎動物の基本骨格である脊柱に規定されるため、安定したゴルフスイングの確立には四肢運動にあわせて脊柱運動の分析が必要です。



2・2 ヒトの運動様式












ヒトは身体の骨格筋()を収縮させて運動しますが、筋肉()は原則的に隣り合う2つ以上の骨に接合しています。隣接する骨()は関節を形成するので筋肉の役割は収縮により関節機能を実現することと同値です。
これは身体運動を「関節機能を含めた骨群の位置関係の変化」に還元できることを示しています。

―関節の基本性質―                           
屈曲筋Aと伸展筋Bで構成される屈曲型関節モデルでの思考実験です。
屈曲準備状態では筋Aと筋Bの収縮力が等しい平衡状態ですが、関節屈曲時には筋Aが収縮し、筋Bが弛緩します。
再度の屈曲にはB収縮、筋Aが弛緩し平衡状態が復元される必要がありますが、この場合、筋Bは緩徐に収縮することが重要です。筋Bが急速に収縮すると関節が平衡状態を通りこして伸展側に「きまってしまう」からです。
一般的に関節は機能筋(収縮筋)と拮抗筋で平衡状態を保ち、機能筋で関節機能を実現します。再度の収縮には緩徐な拮抗筋の収縮で平衡状態を回復する必要があります。
短時間の1作業内に1つの関節機能を2度以上実現することは生理的に困難なことを意味します。



2・3 ヒトの骨格                  
ヒトの骨格は体幹骨格と四肢骨格に大別されます。              
体幹骨格:
頭蓋骨;外後頭隆起が個別座標の原点です。
頚椎群{C 1C7};環椎(C1)は後頭骨(頭蓋骨)と環椎後頭関節で連結しています。
(C7)の棘突起は明らかな隆起を形成するため (C7)を隆椎とよびます。
頚椎群の機能は胴体部の運動が頭部に与える影響を軽減し安定した頭部位置を確保することです。
胸椎群{Th1Th12 肋骨群に連結、胸郭を支持します。
腰椎群{L1L5};仙骨に連結、上半身の重量を支持します。
仙骨;骨盤の構成骨で腸骨と仙骨関節を形成します。左右の外側仙骨稜が重要です。

四肢骨格:胸郭、肩甲骨、上腕骨、前腕骨、手指骨群、骨盤、下肢骨群、足骨群



2・4 体幹骨格と体幹姿勢
―頭部支持様式― 

                           









頭蓋骨は第1頚椎(環椎:C1)と環椎後頭関節を形成します。環椎(C1)の左右二対の平皿状の関節面で頭蓋骨底部の半球上の後頭顆を支えています。     
{外後頭隆起と環椎後頭関節}全体を一種のヤジロベーと見做すことができます。


―脊柱―                                
脊柱は多数の脊椎骨が重なって形成されます。脊椎骨は椎体の後方に棘突起、左右に横突起と呼ばれる突起を有します。上下に重なる脊椎骨は関節を形成しています。この関節は回転型と屈曲型の2種類の関節機能をもちます。


―上半身姿勢の制御―
基本構造:{胸椎群 ο胸郭 ο鎖骨 ο肩甲骨 ο上腕骨 ο前腕骨群 ο手骨群}
胸椎から手骨群は関節構造(ο)で連結されています。複数の可動点(ο)があるため運動様式は複雑です。

1){胸郭 ο鎖骨 ο肩甲骨 ο上腕骨}の機能












鎖骨に連結した肩甲骨が胸郭上に乗っかる形態から、肩甲骨は胸郭上の一定範囲で滑り移動が可能です。

モデル装置を想定し運動様式を整理します。                 
適当な木棒が釣鐘頂点と釣鐘下縁で接続した釣鐘状の竹篭を想定します。
上面に取手を装着し下面が凹面の木製の落し蓋と長短2本の柳小枝を想定します。
長短2本の柳小枝が直交する形態で落し蓋に連結し、自由端にリング構造を接続した装置を想定します。短い小枝側のリングを中心棒に通し竹篭の左右に落し蓋を乗せ、長い小枝側のリングを紐で連結します。

 
                      












木棒で支えた竹篭上で左右の落し蓋を滑らせ連結リングの位置を移動させる思考実験です。
連結リングを移動させるには①左右の落し蓋を同時に竹篭上で滑らせる、②左()を固定し右()を竹篭上で滑らせる2通りの方法があります。
連結リングの移動位置を制御する観点から①法よりも②法が安定です。

中心棒を脊柱に、竹篭を胸郭に、短柳枝を鎖骨に、落し蓋を肩甲骨に、落し蓋の取っ手を肩甲棘に、長柳枝を上・前腕に、連結リングをグリップに対応させ胸郭 ο鎖骨 ο肩甲骨}の運動様式を整理します。
肩甲骨の位置固定の指標は菱形筋、肩甲挙筋、棘上筋、棘下筋が集中する肩甲棘三角です。
肩甲骨の滑動様式は解剖学的に菱形筋の制約をうけるため、肩甲棘三角を中心にした回転滑り運動になります。
【左右滑動型肩甲骨運動】:
左右の肩甲骨を胸郭上で回転滑り運動します。スイング構築には利用しません。
【右固定型左肩甲骨滑動運動】
位置固定の指標は右肩甲棘三角です。右肩甲骨を位置固定し、左肩甲骨を胸郭上で回転滑り運動します。テイクバックに関連します。
【左固定型右肩甲骨滑動運動】
左肩甲骨の位置固定の指標は左肩甲棘三角です。左肩甲骨を位置固定し、右肩甲骨を胸郭上で回転滑り運動します。インパクトに関連します。
                       


2){肩甲骨、上部胸椎、頚椎、上腕骨}の機能

               










肩甲骨と上部胸椎、頚椎、上腕骨の相互作用に関係する重要筋群の検証です。
右肩甲骨に付着する重要な筋群は次の3群です。 
ⅰ;第6・7頸椎と第1~4胸椎から起こり肩甲骨内側縁に付着する菱形筋
ⅱ;第1~4頸椎と肩甲骨上角中心に分布する肩甲挙筋
肩甲棘の上下窩と上腕骨に分布する筋群(棘上筋、棘下筋)

)群筋の本来の機能は右肩甲骨を内側に引くことですが、右肩甲棘三角を位置固定すると、第6・7頸椎と第1~4胸椎の右側線がきまります。            
)群筋の本来の機能は肩甲骨を上内方に引くことですが、右肩甲棘三角を位置固定すると第1~4頸椎の右側線がきまります。                    
)群筋;右肩甲棘三角を位置固定し③群筋を収縮させると右上肢が挙上します。














3){上腕骨、前腕骨}の機能
上腕骨と前腕骨は肘関節で連結されています。
肘関節は上半身の機能状態と関連したクラブ支持様式に重要な役割をもちます。
上半身の機能状態を「巧緻作業」に適した状態に保つように肘関節のクラブ支点として内肘(上腕骨内顆)を利用します。



4){手骨群}
哺乳類、霊長目の手の特長は「拇指と他指との対向性の進化に基づいた物を掴む能力」です。クラブシャフトを手指で把持する観点から手指の機能を検討します。









拇指と他指の対向性からみた把持様式:                   
拇指先端⇔2指先端
拇指球 ⇔3指先端
拇指球 ⇔4指先端

第5指には拇指の(明確な)対向領域が設定できません。
小指丘 ⇔5指
※小指丘と共同して対象物との接点(把持支点)を形成します。


―下半身姿勢の制御―
1)団扇・板モデル 
                          













扇部形態が五角形の団扇状の板(P)と扇部形態の空隙をもつ大きい板(Q)で関節モデルを想定します。(P)の柄部を操作することで(Q)の単純な姿勢制御が可能です。
扇部(P0)と柄部(Ph)が関節構造で接合され、(P0)内に作用点を2つ設定したモデルを想定します。
このモデルでは(P0)(Ph)(Q)のより複雑な姿勢制御が可能です。姿勢制御の指標は(P0)内の2つの作用点と(P0)&(Ph)が作る関節構造の両端の4点です。


2)腰椎群、仙骨、骨盤
第5腰椎と仙骨は関節で連結し、仙骨と骨盤は仙腸関節とよばれる関節を形成しています。
団扇・板モデルで扇部に設定した2つの作用点を左右の(外側仙骨稜)に、柄部の両端をL5腰椎の左右横突起に対応させると腰部と骨盤の姿勢制御モデルに相当します。
{腰椎群、仙骨、骨盤}群の運動様式は(L5腰椎横突起)(外側仙骨稜)との位置関係に規定されます。


3)ドーナッツ・スティックモデル 
                   













円形ドーナツの左右に2本のスティックを挿したモデルを想定します。スティックでドーナツ体を回転させる様式としては、2本のスティックを捻りながらドーナツ体を回転する様式①、片方のスティックの刺入部を位置固定し他方のスティックでドーナツ体を回転する様式②があります。


4)骨盤、大腿骨、ケイ骨&ヒ骨、足骨群
腰部から足までの骨群は、{骨盤ο大腿骨ο(ケイ骨&ヒ骨)ο足骨群}で構成されています。この骨群の最重要機能は骨盤の回転運動です。連結部の股関節、膝関節、足関節は可動点であり下肢を構成する多数の骨と複数の可動点を個々に制御するプログラムは複雑です。
ドーナッツ・スティックモデルのドーナツ体を骨盤に、スティック刺入部を股関節に、スティックを大腿骨以下に対応させます。
「4軸スイング」で利用する骨盤回転運動は様式②に相当し、「片側股関節位置固定型骨盤回転」とよびます。ポイントは支点となる股関節の位置固定です。
{大腿骨、(ケイ骨&ヒ骨)、足骨群}の機能は「片側股関節位置固定型骨盤回転」を支えるスティックに対応します。必要時に股関節を支えられるように連結部の膝関節と足関節が適切に「きまる」必要があります。                    


 股関節の関節タイプは「球関節」であり、回転運動以外では「片足で休め」で代表される屈曲運動も可能です。
日常生活では骨盤の回転運動機能より屈曲運動機能を利用する頻度が多いので、骨盤回転運動に比して安定性・再現性が劣る「屈曲運動」をスイング構造に組み込まない注意が必要です。                                 

5)足骨群
足底の加重位置はスイングフェーズによって変化しますが、加重位置変化は「回転軸・補助軸の作業」と「片側股関節位置固定型骨盤回転運動」を通じて制御します。



2・5 クラブ支持様式                         














左5指*小指丘が協同してグリップエンドを支持しクラブの運動支点を設定します。
左4指*拇指球と右4指*拇指球でクラブを把持します。
クラブの全体重心がシャフトを含む垂直面上に位置することが条件で、このクラブ把持様式を「クラブ平衡姿勢」と呼びます。











2014年4月7日月曜日

1 座標



                                                     











日常空間で特定点を表現する場合、一般的には3次元座標を利用します。原点からそれぞれ直交する3本の軸 (XYZ)を立て、特定点と各軸までの距離で位置を示します。点Aは(x y z)と表現され、客観的な視点を持った座標系です。
ヒトの身体は左右対称ですから3次元座標内でヒトの正中面をYZ面に一致させた場合、
ヒトは総体的に { F(x y z)+ F(x y z)} で与えられます。





1・2 個別座標(特定個人別座標)
個別座標(特定個人別座標)とよぶ座標系を定義します。ある平面に特定個人が直立した場合、その身長・体格から外後頭隆起*の位置が決まります。外後頭隆起が個別座標系の原点()です。外後頭隆起を含む正中面を頭部垂直面とよびます。個別座標系は原点と(左右の空間をふくむ)頭部垂直面で構成されます。










(注)外後頭隆起*;眼の高さ真後ろ、頭蓋骨のそら豆大の隆起     

           













個別座標内に点Aが与えられた場合、Aから頭部垂直面に垂線を下ろしてAを決め→A間の距離をγ、直線→Aと頭部垂直面上の水平線がつくる角度をθ、A→A間をとすると、Aは(γ、θ、t)で表せます。

                                 
点Aがある平面上で何らかの運動をする場合、Aの運動軌跡をイメージする思考実験をおこないます。Aが運動する平面をホストに正対する垂直面()と隆椎*を含む斜行平面()で、点Aの運動を直線運動と曲線運動に分けて考えます。
隆椎*;首根っこ真後ろ、脊柱の(第7頚椎)隆起部分  

                 

()面上でAが左右方向に平行移動する場合
Aを表すパラメーター(γ、θ、t)γ、θが固定されのみが変動します。  
()面上でBが斜行直進する場合
(γ、θ、t)のパラメーターがすべて変動します。             

()面上でAが斜行直進する場合                      
(γ、θ、t)のパラメーターがすべて変動します。

              













()面上でAが楕円運動する場合                      
(γ、θ、t)のパラメーターがすべて変動しますが、その変化様式は斜行直進に比して複雑です。                                       

この思考実験からA(γ、θ、t)の運動軌跡イメージの難易度は
水平移動の変動パラメーターはのみであり軌跡イメージは最も容易である。
同一平面上で曲線運動と直線運動を比較すると、曲線運動のパラメーターの変化率は直線運動に比して複雑であり軌跡イメージはより困難である。
ことが分かります。


―基準ベクトル・基準垂直面―                       










個別座標内の右から左の水平方向ベクトルを基準ベクトル(⇔と表記)と定めます。基準ベクトルに平行な垂直面を基準垂直面とよびます。
Aを含む基準垂直面をA基準垂直面、点Aを含み基準垂直面に直交する垂直面をA垂直面とします。                                                           
例) 頭部垂直面;原点(外後頭隆起)と個別座標系を構成します。
頭部基準垂直面;外後頭隆起を含み頭部垂直面と直交する垂直面です。
左内踝垂直面;左内踝を面上に含む頭部垂直面と平行な垂直面です。
ボール基準垂直面;ボールを面上に含み頭部垂直面と直交する垂直面です。 


―個別座標系の表示記号―                                            
位置記号  <      > ;位置関係・距離を表示
集合記号 {        } ;圏、群を表示  
運動記号 【       】 ;運動状態を表示 
変化記号         ;状態の変化を表示

位識点記号  ≪     ≫ ;位識点*の表示
ベクトル記号   ⇔    ;基準ベクトルの表示
重心記号     ◎    ;クラブ重心領域の表示
振動節記号    ◆    ;近位振動節**の表示
(注)位識点*;解剖・生理を参照、近位振動節**;クラブ構造を参照




1・3 圏域の設定                            
個別座標内に基準構造(F)と関心点(ABC・・・)が与えられたとき、Fと関心点群を含む領域を設定し、圏Fとよび次式のように表現します。
{ FABC・・・}
標準的な基準構造は特定直線です。直線以外に特定平面(頭部垂直面など)、特定領域(隆椎など)を基準にした圏の設定も可能です。                               
                                                                  

1・4 基準線と定点の位置関係                      














{ FA }が与えられたとき、適当な平面上にFAを投射してFAの水平方向()の位置関係を次のように表現します。
F⇔∥FA>: AFの右にあることを示します。
F⇔∥AF>: AFの左にあることを示します。

FA間の距離を次のように表現します。
F⇔∥FA>=αFA間の距離がαであることを示します。
F⇔∥FA>=0:AFに重なる場合です。     
F⇔∥FA>=φ:AFの左側にある場合です。
この場合のA Fの距離は<F⇔∥A F>(≠φ)で示します。                    




―2点間の位置関係―                           











{ FAB}が与えられたとき、適当な平面上にFAB を投射して水平方向()の位置関係を次のように表現します。
FABFを基準線として ABの左にあることを示します。

AB間の距離を次のように表現します。
F⇔∥AB>=αAB間の水平距離がαであることを示します。
F⇔∥AB>=0:ABが同一点に重なる場合です。     
F⇔∥AB>=φ:ABの右側にある場合です。
この場合、2点の距離はBA間になり<F⇔∥BA(≠φ)で示します           

《応用》
基準として太さのある軸(G)が与えられた場合、Gの左縁か右縁を基準線に選びます
修飾辞をつけて選択した縁を示します。
(-G):軸Gの左縁を基準線に選択したことを示します。
(-G):軸Gの右縁を基準線に選択したことを示します。
与えられた点(A)が容積をもつ場合、関心域点を修飾辞で示します。
(-A):関心域点は点Aの左端であることを示します。
(-A):関心域点は点Aの上端であることを示します。
(-G)⇔∥(-A)(-B)>=0:軸Gの右縁でAの右端とBの左端が接していることを示します。

《略記法》
{ FAB}が与えられ、位置関係の指標である基準線F と基準ベクトル()が自明であるとき(F)()は省略します。
FAB>=α → <AB>=α
F⇔∥FA>=α → <FA>=α












―定点の運動、特異点、ベクトル反転―
{ FA }が与えられ、Aがある運動状態の場合
【<FA>=α→0φ】 はAが右方からFに近づき左方へ通過することを意味します
FA>=0 が特異点でAFに対する運動ベクトルが反転します。       

{ FAB }が与えられ、ABがある運動状態の場合
【<FAB>=α→0→φ】 はBが右からAに近づき左へ通過することを意味します。
FAB>=0 が特異点でBAに対する運動ベクトルが反転します。    













3次元座標での2点間の距離・位置関係の表示は客観的な指標ですが、個別座標内では圏設定や定点の投射・写像も含めて感覚的な表現です。




1・5 補助軸の設定


個別座標に4本の補助軸を想定します。軸起点は左右足首関節の内踝、外踝位置、起点構造は球関節タイプで自由に回転可能な軸をイメージします。内踝を起点とする軸をMP(メジャー軸)、外踝を起点する軸をSP(スモール軸)と呼びます。                  


接尾辞をつけて左右を区別します。
左内踝軸MPL(major-pole-left)         右内踝軸MPR(major-pole-right)    
左外踝軸:SPL(small-pole-left)          右外踝軸:SPR(small-pole-right)     





―軸状態の表現法―

4本の軸はスイング過程で関心領域()と関連して回転状態と静止状態を推移します。
{ PA }での補助軸Pと関心領域Aの動態の表現法です。

P∥左回転、∋A】 P軸がAを軸上に乗せて左回転することを意味します。
P∥静止、∋A】 P軸がAを軸上に乗せて静止しています。
P∥静止、∋Φ】 P軸は関心領域()を軸上に含まず静止しています。      

軸設定はクラブ重心やゴルファー身体の関心領域を補助軸上へ投射することでスイング行程を感覚的な直線運動に還元することを目的としています。